研究課題/領域番号 |
22510040
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
明日香 壽川 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (90291955)
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キーワード | 炭素制約 / 排出量取引 / 炭素税 / カーボン・リーケージ / 国際競争力 |
研究概要 |
本研究の目的は、まず排出量取引制度や炭素税などのカーボンプライシングによる炭素制約が企業活動に与える影響に関する先行研究の結果を整理することである。同時に、欧州連合における排出量取引制度(EU ETS)および米国の排出量取引制度法案の分析に用いられたものと同じ方法論を用いて、日本における炭素集約産業および国際競争産業を具体的に明らかにし、それらに対する経済的影響を明らかにすることである。さらに日本における排出枠の割当や保護すべき産業部門に関する政策オプション、特にベンチマークの内容を検討し、具体的な制度設計案を提示も行う。今年度は、炭素制約と個別の産業の国際競争力に関する経済モデルを構築してシミュレーションを行った。すなわち、日本において炭素集約度と貿易集約度が共に高い4つの産業(セメント、鉄鋼、化学製品と紙パルプ)を対象とした中国を含む複数地域の一般均衡モデルを構築し、排出量取引制度に対して補足的な制度となる国境税調整や排出枠無償配分などの複数の政策シナリオに対応するCO2排出削減効果、CO2排出価格、厚生水準(GDPへの影響)及びカーボン・リーケージの大きさなどについて数量的な分析を行った。その結果、各産業の具体的なカーボン・リーケージの大きさなどが定量的に明らかになり、複数の影響緩和策の比較が可能となった。さらに、中国で炭素制約が入ったと仮定した場合の日本企業の国際競争力や生産量への影響も定量的に明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際競争力喪失の可能性がある産業が同定でき、その影響の大きさも明らかになった。さらに、モデルによって、緩和策の効果などが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
モデルをより精緻化し、最近の温暖化に関する国際交渉の結果や各国の温暖化対策の進捗状況をモデルに取り込むことをめざす。
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