研究概要 |
当該年度は、環境政策の展開を歴史的に考察する「環境政策史」という新しい研究領域を開拓した。 (第1段階)環境史,環境経済史等の関連分野の整理 環境問題に関する歴史的研究は、これまで様々な分野でおこなわれてきた。歴史学、地理学、人類学、社会学、古気候学などをバックグランドとする環境史や、わが国で独自の発展をみた公害史、さらに人間の経済活動と自然環境の関係を解明する環境経済史などがそれにあたる。 環境史、公害史、環境経済史は、歴史学者が一般に対象とする現代以前の時代を考察対象としているため、1970年以降に形成され発展を遂げた環境政策は、研究対象とはなりにくい。しかし、環境政策史の手法をのちに第2段階で検討するためには、従来の環境問題に関する歴史的研究の方法に学ぶ必要がある。 そこで、第1段階では、内外の環境史、公害史、環境経済史のレビューをおこないこれらの研究分野の到達点と課題を明らかにした。そして、環境政策史と環境史、公害史、環境経済史の相違を解明した。 さて、環境政策論に位置付けられる研究のなかには、宮本(1987)やJaenickeら(1998)による環境問題の政治経済学的研究のように、歴史を描くことを重視してはいないが、歴史的な展開の記述を踏まえた考察をおこなっているものがある。そのような研究と環境政策史の違いを検討することにより、環境政策史の性格を明確にした。 (第2段階)環境政策史の枠組み・方法論確立 小生のこれまでの研究では、環境政策史の方法として公文書等の一次資料を利用するアプローチに焦点を当てたが、環境政策史の方法はそういったものに限定される必要はない,そこで、環境策史研究の方法論として、モデル分析や定量的研究を含む多様なアプローチが存在することを示した。そして、それらの有効性を検討した。以上より、国際的に見ても独創性の高い研究領域を開拓した。
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