研究課題/領域番号 |
22510042
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
喜多川 進 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 講師 (00313784)
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キーワード | 環境政策史 / 環境政策 / 廃棄物政策 / ドイツ / デュアル・システム |
研究概要 |
昨年度は、環境政策史という新しいアプローチの枠組み・方法論の検討をおこなった。それを受けて、当該年度は実証的な環境政策史研究に着手した。とりあげた事例は、ドイツの容器包装廃棄物政策の1970年から1991年にかけての展開である。ドイツの容器包装廃棄物政策は、新しい環境原則である拡大生産者責任(EPR)の最も早い導入例とされ、ドイツが「環境先進国」、と評価される契機にもなった。しかし、同政策の誕生経緯はほとんど明らかにされていない。特に、ドイツの容器包装廃棄物政策は日本の容器包装リサイクル法制定にも影響を及ぼしたものでもあるため、この政策の全体像の解明から、日本の環境政策への政策的教訓をも導出できると考えられる。したがって、当該年度は、先導的なドイツの容器包装廃棄物政策が、なぜ、いかにして生み出されたのかについて、環境政策史のアプローチに基づき、以下の諸点を明らかにした。 ドイツの容器包装廃棄物政策は、1990年代初頭に突如生み出されたものではなく、1970年以来の一連の自主的取組の失敗や廃棄物処理法の改正等を経たものであった。1982年に保守・中道連立のコール政権が誕生するなかで、緑の党は1983年に国会(連邦議会)に議席を獲得した。一般には、緑の党等のグリーン派の存在が容器包装廃棄物政策推進とも関わるとされることが多い。しかし「先進的」と評されることの多いドイツの容器包装廃棄物政策を推進したのは、緑の党や社会民主党、さちには環境NGOのような環境政策に熱心な勢力ではなく、じつは、コール連立政権を形成していた様々な保守政党であった。そして、その推進背景には環境要因のみならず、政治的・経済的・社会的要因が存在していたことを、ドイツ公文書館所蔵の未公刊文書(官僚作成の政策案、法令の草案、政官財の交渉記録・書簡、政党・業界団体の声明等)なども利用して解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的および研究計画に沿って、研究を進めることができた。2011年10月開催の国際学会での環境政策史に関する報告論文(英語)を執筆し、本年度の成果をすでに約200ページの原稿にまとめた。さらに、そのほかにも本年度の成果に関わる論文を執筆した(目下、査読中)。さらに、2011年9月開催の環境経済・政策学会において、国際的にも初めての「環境政策史」という企画セッションをオーガナイズした。環境政策研究者だけでなく、著名な環境史研究者も交え、今後の環境政策史のあり方を展望する極めて重要な議論をすることができた。したがって、本期の成果は、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツに関する事例研究から、日本の容器包装廃棄物政策ひいては環境政策への政策的教訓を導出する。そのために、本研究で詳細な考察をおこなってきた環境政策史アプローチを利用する。そして、環境政策史に関する方法論的研究と事例研究の成果を総括する。
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