研究概要 |
(1)低炭素灌漑技術法・再生可能エネルギー技術を考慮した産業部門別環境負荷量原単位の推計 将来の高齢化過疎化が深刻と予想される地域をピックアップし,過去の都道府県版産業連関表を用いて農林漁業、エネルギー部門に焦点を当てた市町村版産業連関表を作成したこの作業は現在普及途上にある環境保全型農業の技術を考慮した産業連関表の更新作業に対応するものである.これまで環境負荷原単位を水質汚濁物質について推計した.別途過去30年分の産業,土地利用動態を地理情報システムを援用して開発し,排出負荷原単位と統合して排出量を推定可能にした. (3)動学的一般均衡モデルによる漁業不振の原因分析 農漁村存続や生物資源絶滅の危機に瀕している地域をケーススタディとして,それらの原因分析に当たり社会システムモデルを開発した.その際、他産業や他地域との関連性を考慮する2国モデルを仮定した.漁業の資源量推定式にはPrey-Predatorモデルを考慮した.観測が困難な複数魚種資源量を推定するために,長期漁獲量を観測値としてモデルパラメータを推定した.モデルは2地域の漁業部門やその他部門の生産量、生産額を良好に予測できた.本モデルにより種苗に混入した外来種の存在や,それを知らない漁業主体の過剰漁獲と,併せて生じた労働投入減少が定量的に示され,総合的な漁業不振の実態が示された.またシナリオ分析を行い,種苗が放流ない場合は,短期間の漁獲量制限努力を経て資源回復がなされた可能性と,それに伴う漁業生産の損害額を定量的に示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過疎化高齢化が進む農村地域の環境社会経済アセスメントの基礎情報となる市町村社会会計表の推定は、その方法や精度の検証作業を終え、合理的な結果を得た点で順調であるといえる.得られた社会会計表を用いた実証分析を漁業資源問題に適応した,発展研究も行うことができた.環境政策変数とリンクする排出負荷量の推定については、特に農業生産技術と温室効果ガスにおいては排出ガス存在の有意性の是非では先行研究を含め大きく意見が分かれるところである.この結果問題となる推定量のばらつきを前提とした評価方法については継続的に検討する必要があるが,概ね計画通りに進んでいるといえる.
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