研究概要 |
本年度の研究では,昨年に引き続き,日本起因漂流物が漂着すると予想される北太平洋海域において,ディスポーザブルライターを指標漂着物として採集した。米国オレゴン州(2012年8月)1海岸, (2013年2月)3海岸,またハワイ州(2013年1月)4海岸で現地調査を行った。一方,調査範囲が広大なため,これまで同様,現地のビーチコーマー(海岸漂着物収集家)や海岸清掃ボランティアにも採取を依頼した。さらに本年度は,比較のため,オーストラリア北岸に漂着したライター565本についても分類した。 この3年間で日本・東アジアを含む北太平洋周辺海岸およびオーストラリア北岸から19,764本のライターを採取した。そのうち台湾,北太平洋島嶼域および米国西海岸からは,伊豆諸島1,437本,小笠原諸島183本,台湾1,506本,ハワイ諸島938本,ミッドウェー環礁2,511本を採取した。一方,米国西海岸(アラスカ州,ワシントン州,オレゴン州)では,日本周辺やハワイ諸島に比べ漂着量が極めて少なく,7海岸中4海岸から7本のみであった。日本を消費製造国とする割合は,伊豆諸島,小笠原諸島,ミッドウェー環礁でそれぞれ42.4%,48.6%,47.7%であったのに対し,自地域からの漂着も見られたハワイ諸島では27.9%,さらにはオーストラリア北岸,台湾,北米西岸ではそれぞれ9.4%,1.5%,0.0%となった。これより日本から流出した漂流物(ライター)は,北太平洋を東流し,ハワイ諸島にまでは達するが,米国西海岸,台湾,オーストラリアへの漂着は,きわめて希であることがわかった。またライターは,タンクに印字されている店舗等の情報から流出地(消費地)を判別することができる。その結果,北太平洋島嶼域に漂着する日本起因ライターの流出地は,太平洋沿岸および人口が集中する内湾域であることが分かった。
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