本研究では、化学物質による環境リスクを対象に、関係者が対話型コミュニケーションシステムを地域レベルで構築し定期的な会議の実施と会議参加者以外のアウトリーチを併用することで、地域全体のコミュニケーションの質や環境リスク低減に向けた取り組みを高める効果について検討する。さらに、これまで事業所レベルや都道府県・政令市等で実施されてきた対話型コミュニケーションの取り組みを整理し、本研究で実施した結果と比較検討したうえで、事例ごとの特徴を踏まえたデータベースとしてインターネット上で公開するシステムを構築する。 このうち、2010年度は、特に全国の自治体におけるこれまでの活動の把握に努めた。質問紙調査を通じて、全国の都道府県ならびに市レベルの地方自治体の化学物質管理や事業者・市民とのコミュニケーションの実態を明らかにし、化学物質管理を行うにあたっての今後のあり方について検討した。調査期間は2010年12月~2011年1月であり、602の自治体から回答を得た。有効回答率は、72.3%である。調査票は、市民や事業者とのコミュニケーションを3つに分類し、化学物質管理に関する事務、普及啓発型コミュニケーション、対応型コミュニケーション、促進型コミュニケーションの4つの部分から構成した。 コミュニケーションの段階として、情報提供→説明会・セミナー→双方向的なコミュニケーションとなっているが、情報提供すら行っていない自治体もしくは情報提供で留まっている自治体が大半である。その一方で、問題発生後に、日頃からの地域の環境状況の把握やコミュニケーションの必要性を実感している自治体もあった。大きな課題として行政側の化学物質管理に関する認識が不十分なことが挙げられる。しかしながら、規模の小さな自治体でも意欲的に取り組んでいる自治体があり、多くの自治体が様々な工夫を行っていることも明らかになった。
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