本研究の最終年度として、これまで実施した研究の取りまとめを行うとともに、過去に実施された環境リスクに関する地域ベースのコミュニケーション事例を整理し、データベースの作成ならびに公開する作業を行った。 まず、これまでの研究のとりまとめとして、全国に所在する都道府県と市レベルの自治体を対象に実施した化学物質管理やリスクコミュニケーションの事例に関する調査の結果を整理し、各取り組みの特性を明らかにした。次に、リスクコミュニケーションへの取り組みに前向きな自治体の例として神奈川県藤沢市を取り上げ、同市に居住する市民を対象とした質問紙調査の結果を分析した。その際、2011年3月に発生した原子力発電所の事故に伴う放射性リスクに対する市民意識や行動と比較し、化学物質に対する環境リスクへの意識や行動の特性を明らかにした。これらの結果を、関係学会において論文や学会発表を通じて、公表した。 また、リスクコミュニケーションに関するデータベースの作成は、次のような手順で実施した。事例の対象は、以下の2種類がある。第一に、上記の自治体向け調査における回答を通じて明らかになった事例があり、これらには自治体が施策として実施している事例とともに、汚染や事故が発覚した後に実施された事例も含まれる。第二に、情報ネットワーク上で検索により収集された事例がある。これらには、各自治体による情報提供や独立行政法人・製品評価技術基盤機構をはじめとする関係団体が整理した情報が含まれる。これらの事例を対象に、実施場所、頻度、コミュニケーションの形式、参加者の状況などの項目から整理した。上記の作業を通じて、事業者からの報告事例106、自治体の施策を通じた事例142、汚染や事故を通じた事例44を整理し、情報ネットワーク上において公開する作業を進めた。
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