研究概要 |
安全な水供給と衛生は人間の存在基盤である.バングラデシュでは飲料水源として利用されている地下水の砒素汚染が深刻であるが,し尿の適正管理が不十分なことから表流水が汚染されるリスクが高いため,代替飲料水源として表流水を利用することが制約されている.本研究では,屎尿の適正管理により表流水の水質汚染を防止し,ため池を水源とする水供給により生活環境の改善が図られている農村において,コミュニティ中心の生活環境施設管理を通して,人々の水・衛生に対する意識,行動の変化,コミュニティ構成員における社会的変化を把握し,自立的かつ持続的に生活環境を維持していくことを可能にする社会システム要件を明らかにすることを目的とする. 今年度実施した研究内容と得られた結果は以下のとおりであり,コミュニティでの生活環境管理に伴う問題が示されることとなった. 1. 施設管理上の課題として,飲料水源となるため池の水質を維持するために設定されたルールが守られておらず,水源の汚染が懸念されること,施設管理のために結成されたコミュニティ組織も十分にその機能を発揮していないことがあげられる. 2. 研究対象の農村の特性として,砒素汚染への対応等、共通する問題に対して,コミュニティレベルで取り組んだ経験に乏しく,日常の問題解決においても個人的コミュニケーションに頼る傾向がある. 3. 安全な飲み水が得られるようになり,ほとんどの村人が利用しているが,一部に利用ルールの不履行がみられ、生活環境を改善するために,個人が果たすべき役割や責任に対する理解は依然として乏しい. 今後は,今年度示された問題にたいしてコミュニティ組織及び村人がどのように対応していくか,その過程でコミュニティ内にどのような社会敵的変化が生じているかをフォーローしていくとともに,自立的な問題解決を可能sにする社会システムの要件を考察する.
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