本研究では、使用中の石綿製品を迅速に撤去し、石綿繊維の大気飛散リスク軽減と循環型社会形成への寄与を図るため、石綿含有廃棄物等の中間処理(水中破砕・固化)と専用保管施設を想定している。nimby施設である石綿廃棄物等の処理施設や処分場は、H24年度初めに大規模無害化処理施設計画が立地上の課題から中止となるなど、新規開設が困難な状況が続いている。一方、東日本大震災では津波により膨大な建物が瓦礫化し、大規模広域での石綿繊維の大気飛散が現実となった。災害現場では、急性毒性を示さない石綿繊維暴露に関して、一部NPOや学識者の危険性指摘があるものの、必ずしも市民レベルで大きな問題となっていない。阪神淡路大震災後の瓦礫処理従事者に石綿関連の死者も出ている前例があるにも関わらず、飛散による危険性の認識は一部者に偏っている現状がある。そこで、本年度はネットリサーチにより、「石綿」と「アスベスト」という言葉の認知とその問題の把握状況を検証した。基礎項目として性別、年齢(10代、20代、30代、40代、50代、60代以上)、居住県別に、家屋状況、最終学歴、職歴、専門と「石綿」、「アスベスト」という言葉の認知と情報の収集先(テレビ、新聞、雑誌等)を調べた。サンプルは人口統計にほぼ準じた地域、男女比、年代別に2千件を確保した。「石綿」と「アスベスト」では、総じてアスベストの方がやや認知が高い傾向がみられた。また、平均4割が問題を把握していると回答しているが、近畿圏で阪神淡路大震災の影響にやや高い認識があるものの、2つの震災での石綿繊維飛散の影響は平均1割程度の認知にとどまっていることが判明した。直接的な被害を受けた東北地方でも、石綿繊維の飛散事故の認知は1割であり、多くの住民は生活圏で石綿繊維の飛散があったことも認識していないことが伺えた。成果の一部は平成25年度建築学会大会等で報告する。
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