研究概要 |
アポトーシスの一連の過程(核の凝縮、核の断片化、貪食)の中で、特に貪食は重要な過程であるが未だ不明な点も多い。中枢神経では、発達中の中枢神経形成過程で過剰に発生した神経細胞シナプスの除去に、ミクログリアが貪食細胞として働いていることが知られている。しかし、放射線などにより損傷を受けた神経細胞除去に、ミクログリア細胞がどのように働いているのか、その詳細については報告がない。 そこで本研究では、アポトーシスに深く関わるp53遺伝子ノックアウトメダカ胚を用い、アクリジンオレンジアッセイによるアポトーシス全過程の可視化、電子顕微鏡観察、などの手法により、発達中の中枢神経で発生するアポトーシスを調べ、p53遺伝子がアポトーシス発生に果たす役割を調べた。さらに、これらのアポトーシスを除去する役割を果たすことが知られているミクログリア細胞に着目し、ミクログリア細胞に特異的に発現するApolipoproteinE (ApoE)遺伝子の発現変化をwhole-mount in situハイブリダイゼーション(WISH)によって放射線照射後12h, 24h, 42h において調べた。 その結果、アポトーシス細胞の貪食進行の状況によってApoEの発現がどのように変化するのか、その詳細を明らかにすることに成功した。本研究は胚の脳を可視化することが出来る上、その大きさが哺乳類と比較してかなり小さく脳全体を丸ごと観察することができるメダカ胚を用いることにより初めて得られた結果である。 さらに、p53遺伝子ノックアウトメダカ胚では野生型胚と比較してアポトーシスの発生が遅延し、その数も少ないことが判明した。しかし、ApoEの発現をWISH法により調べたところ、野生型胚とp53遺伝子ノックアウトメダカ胚にApoE発現に大きな差は認められず、ミクログリア細胞の働きはp53遺伝子に非依存的であることが判明した。
|