脊椎動物の発達中の中枢神経は、化学物質や放射線などの悪影響に対して非常に感受性が高いことが知られている。外傷及び神経変性疾患によって脳や脊髄が損傷するとミクログリアが活性化され、損傷部位へ移動し、神経栄養因子やサイトカインを放出して神経保護作用を行うが、神経細胞の回復が不可能な場合には、細胞や残片を貪食して除去することが知られている。本実験ではメダカ胚をモデル生物として用いて、放射線被ばく後の神経細胞に誘発されるアポトーシスが照射時間経過とともにどのように変化するのかを調べた。さらに、これらのアポトーシス細胞の消化吸収を調べるため、ミクログリアの消化活性により発現が上昇するApoE遺伝子発現をwhole-mountinsituハイブリダイゼーションにより調べ、ミクログリア細胞の食胞にアポトーシス細胞が10-15個集められその後それらが消化されること、ApoE遺伝子の発現は、これらミクログリアの食胞に集められたアポトーシスの消化がかなり進行した段階で上昇することを明らかにした。さらに、貪食がほぼ終了した時点において、アポトーシスの消化が進行している時に認められたApoE陽性細胞の数よりも明らかにそれらが増えていること、p53遺伝子欠損型メダカ胚では放射線照射により誘発されたアポトーシスの数が野生型照射胚よりも明らかに少ないにも関わらず、貪食がほぼ終了した時点で観察されたApoE陽性細胞の数は両者同じ程度であったことから、ミクログリアの活性化にはアポトーシス貪食目的ではなく、貪食終了後に活性化される第二のシステムがプログラムされている可能性が示唆された。
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