研究概要 |
大深度掘削NaCl型温鉱泉水での天然放射性核種の挙動,特にラジウムが高濃度(先行研究で発見)になる成因解明とモデル構築を目指した。具体的には,深部NaCl型熱水を採水し,化学成分、水素・酸素同位体分析、天然放射性核種 (ウラン(U), トリウム(Th), ラジウム(Ra)同位体) 測定、さらに掘削コアー岩石試料の測定行ない、高濃Raの存在普遍性の検証とラジウムが高濃度になる成因解明を目指して、ラジウムの室内吸着実験に取り組んだ。 昨年度に続き北海道に点在する大深度掘削NaCl型温鉱泉水に注目して、上記の分析を行うと共に、掘削コアー岩石試料の化学的リーチング実験を実施した。 ①温泉水が湧出している領域深度の岩石について,0.1Mと1M HNO3抽出よび全分解を実施した。それぞれについてウラン,トリウム,ラジウム同位体を測定し、それらの放射能比を温泉水の結果と比較検討した.これにより,ラジウムは岩石表面相(ラジウム等を高い濃度で含んでいると考えられるコーティング相)から主としてα反跳でRaが水中に移行していることが分かった。 ②今回の研究全体を通してみると,大部分の温泉は古い化石海水に由来し,コーティング相からのα反跳で水中に移行し、高塩分中ではラジウムは保存性元素として存在してことが分かった。 ③これらの成果は、高NaCl型温鉱泉水の存在下でのRaを中心とする放射性核種の挙動を推察する上で、意義ある知見である。得た成果は、U,Th,Raのホットアトム反跳化学、高塩分熱水と深層岩石との相互作用による物質循環、さらに高レベル放射性廃棄物地層処分の際に遭遇すると考えられる高塩分熱水中での放射性核種の長期挙動研究に役立つ。
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