研究概要 |
本研究は,乳幼児に対するX線医学検査による患者の被ばく線量を,乳幼児,特に0~1歳までの新生児に対して行われている種々のX線医学検査について,本研究で作製した新生児ファントム臓器線量計測システムを使用して,目の水晶体や,がんを発症することが知られている臓器ごとに測定・調査し,我が国における乳幼児X線医学検査による患者被ばくの実態を解明するとともに,被ばく線量低減の方策を探ることを目的としている。本年度は,新生児ファントム臓器線量計測システムの作製と試験的な被ばく線量計測実験を行った。まず,市販のPINシリコンフォトダイオードを,感度のX線入射方向依存性を打ち消すため2個1対とし,これに,生体等価なカーボンファイバーケーブルを取り付けた,線量計素子を24個製作した。平成16年度~平成17年度科学研究費補助金による研究「X線医学診断による小児の被ばく実態を解明するための臓器線量計測システムの開発」で製作した多チャンネルの信号処理電子回路を使用し,新たに製作した24個の線量計素子について,実効エネルギーの異なる種々のX線に対して得られた電圧信号をA/D変換器を通してパーソナルコンピュータに取り込み,吸収線量に変換するコンピュータプログラムを作成した。新規に購入した人体等価な新生児用ファントムの,ICRP新勧告(ICRP Pub.103)に基づく実効線量評価のための種々の組織・臓器位置に24個の線量計素子を装着し,新生児ファントム臓器線量計測システムに組み上げるとともに,これを小児専門病院へ持ち込み,乳幼児に対する典型的なX線単純検査,並びに,X線CT検査による試験的な被ばく線量計測実験を行って,正常に動作することを確認し,システムを完成させた。
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