研究課題
DNAは遺伝情報を担う重要な物質であり、生命が正常に営まれるためには安定にDNAを維持しなければならない。しかしDNAは放射線、紫外線、化学物質などの外的要因、および細胞の代謝過程で発生する活性酸素などの内的要因により絶えず損傷を受けている。これらのDNA損傷は、細胞死や突然変異を誘発し、ひいては老化・がん化等の原因になる。細胞内のエネルギーを生産するミトコンドリアにおいて、その大量な酸素消費から多くの活性酸素が生じ、ミトコンドリアDNAに多くの酸化DNA損傷を導くことが容易に想像できる。また事実その酸化DNA損傷の存在が証明されている。細胞はこの損傷の多いミトコンドリアにおいてどのように転写反応を進めるのだろうか?またどのように損傷を修復し機能を回復させるのだろうか?それらを調べるために、ミトコンドリアのRNAポリメラーゼの転写伸長反応が損傷によってどのような挙動を示すか?精製したミトコンドリアRNAポリメラーゼおよび損傷DNAオリゴを用いて生化学的手法によって解析した。酸化PNA損傷8-オキソグアニン、チミングリコール、または塩基脱離部位を含むDNAテンプレートに対して、プライマーRNAを対形成させ複合体を形成した後、ミトコンドリアRNAポリメラーゼによりRNA合成を観察、その結果、ミトコンドリアRNAポリメラーゼは、8-オキソグアニン、チミングリコールを乗り越えることがわかった。一方塩基脱離部位においては、ミトコンドリアRNAポリメラーゼの転写は停止していた。
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