研究概要 |
本研究の目的は、主要なチミン酸化損傷の一つ5-ホルミルウラシル(5-foU)の生体内修復機構の全容解明である。5-foUは最も生成収率の高いチミン酸化塩基損傷の一つであり、誤対合性ならびに二次的付加損傷生成を示す。本研究では、5-foUに対する修復システムをFOシステムと名付け、その未解明のロストピースを見出し,5-foU修復の全容を明らかにしていく。ここで提案するFOシステムは,(1)非誤対合性5-foUの除去(AlkA/SMUG1, TDG, MBD4),(2)誤対合5-foU誘発突然変異の抑制(MutSLH/?),(3)5-fodUTPの分解(?/?)であり、?の部分が未だ明らかとなっていないロストピースである。 本年度は研究計画最終年度として、前二年に引き続き、(1)の中心テーマである「DNA中に取り込まれた5-foU除去修復酵素活性の比較検討によるその役割分担の明確化」の検討を行った。その具体的内容は、以下の通りである。まず、5-foU除去修復に関連すると考えられるDNAグリコシラーゼである大腸菌AlkA(J. Biol. Chem. 274: 25136, 1999)およびMug、ヒトSMUG1、UDG1、UDG2、TDG、MBD4の遺伝子クローニングを行い、大腸菌蛋白大量発現系を用いて、各酵素タンパクを調製した。同時に、5-foU特異的含有オリゴヌクレオチド基質を合成し、ニッキングアッセイにて、順次5-foU修復活性の比較検討を行った。また、(3)のテーマに対して、細胞内ヌクレオチドプール中における5-fodUTPの存在比の分析をLC-MS/MSで行う系を確立するとともに、5-fodUTPase活性のアッセイ系確立のため、放射性ラベル5-fodUTPの合成系を確立した。
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