Fibroblast Growth Factor (FGF)は細胞増殖因子の一種であるが、放射線障害の予防・治療に有効であると考えられている。本課題では、作用機序が不明なFGF12について、細胞外からの投与により放射線障害を軽減できることを、培養細胞とマウスを用いて証明するとともに、そのFGF12の作用機序を解明することを目的にした。本年度は、組み換え体FGF12Bを用いて、ラット腸細胞株IEC6細胞を培養し、放射線誘導性アポトーシスをHoechst核染色で検討した。その結果、1、10、100ng/mlのFGF12B濃度で、20GyのX線照射24時間後の時点で、有意にアポトーシスを抑制することを見いだした。以前の研究より、FGF12蛋白が細胞内に移行して抗アポトーシス効果を発揮していると考え、FGF12BをAlexa568の蛍光でラベルし、IEC6細胞内に移行できるかFACSで検討した。その結果、100ng/mlと1μg/mlのFGF12B-Alexa569で細胞を培養することで、24時間後に80%以上、48時間後では95%程度の細胞に蛍光を検出した。さらにFGF12Bが細胞質に移行していることをconfocal顕微鏡にて確認した。タンパク質が細胞内移行する際、膜透過に関するドメインを有している場合がある。そこで、FGF12B全長にわたり30アミノ酸からなるペプチドを13種類合成し、FITCラベルすることで、どの部位が関与しているか検討した。その結果、C末端部のアミノ酸配列140-169のペプチドをはじめ、中央部にも複数のペプチドが細胞内移行した。以上の所見より、細胞外FGF12が放射線誘導性アポトーシスを抑制できることを示した。また、FGF12が細胞内移行できることも明らかにし、FGF12に膜透過ペプチドドメインが存在すること示唆した。
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