研究概要 |
ピレスロイド系殺虫剤代謝物である3フェノキシベンジルアルコール(3PBAlc)、3フェノキシベンズアルデヒド(3PBAld)および3フェノキシ安息香酸(3PBAcid)はエストロゲン様の活性を有し、環境ホルモンとして生態系に影響を及ぼす可能性が示唆されている(McCarthy et al., 2006; Nakamura et al.,2007)。しかしながら、3PBAlcおよび3PBAIdが及ぼす健康への影響に関する報告は少なく、今後ますます毒性学的および環境学的な研究が望まれている。本年度はまず、これら物質の代謝に関与する酵素を新規に探索し、各種病態罹患時の体内動態変化および毒性発揮変化の予想を試みた。ラット肝ミクロソームを用いた検討で、UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)によって3PBAlc, 3PBAldおよび3PBAcidがグルクロン酸抱合さて、胆汁中および尿中に排泄されることを確認した。さらに、UGTIA6およびUGT2B1がこれらの抱合反応に関与を明らかとした。UGT1A6および2B1の発現量および活性は糖尿病および肝障害で低下することが報告されており、3PBAsの排泄速度が低下する可能性が示唆された。さらに、βグルクロニダーゼは糖尿病罹患時に血中濃度が上昇するため、これが3PBAsのグルクロン酸抱合体に作用することで3PBAsの排泄を遅延させることが予想される。現在は実験動物を使用してこれらを検証している。
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