環境ホルモンと疑われている物質の多くは、エストロゲン様作用を有しており、ビスフェノールA(BPA)もエストロゲン様作用が確認されている。よって、BPA及びエストロゲン(E_2)の海馬内微量注入による雄性ラットの空間学習記憶能への影響を評価し、さらに抗エストロゲン作用を有するタモキシフェン(TAM)を併用した際のBPA及びE_2の効果について検討した。実験は可変式迷路装置を用いて、MAZE TEST (A)を1日3 trial、3日間行い、ゴールにたどり着くまでの時間(Time)、エラーエリアへの進入回数(Error)を測定することにより、空間学習記憶能を評価した。MAZE TEST (A)において、BPA投与群の日ごとのTimeはControl群と比較して、常に低い値を示し、有意差も認められた。E_2投与群においても有意差は認められなかったが、3日間ともControl群よりも低い値を示した。このことからBPA及びE_2の海馬内微量注入により、空間学習記憶能の促進効果が示唆された。翌週のMAZE TEST (B)では、TAMを前処置したBPA投与群の日ごとのTimeは、3日間ともControl群よりも高い値を示した。以上より、BPAはE_2と同様、海馬におけるエストロゲン受容体に作用することにより空間学習記憶能を向上させることが示唆された。ダイズ由来植物エストロゲンのゲニステインにおいてもBPAと同様に学習記憶の改善効果が認められたが、この効果はTAMによって抑制されなかった。従って、ゲニステインによる学習記憶改善効果は、エストロゲン受容体を介さない経路による効果であることが示唆された。その他、BPA及びノニルフェノール周産期曝露の学習記憶ならびに周辺機能についての研究及びエストロゲン受容体解析も行っているが、例数追加の必要が有り、平成23年度に報告する。
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