研究概要 |
1. 妊娠20日目のアカゲザルにTCDDを0, 30、300ng/kgBW(各群25、20、29頭)を皮下投与し、妊娠中および出産後授乳中は30日で初回投与の5%を維持量として投与した。 2. 各群で2度の交配・妊娠(約160日)・分娩、仔アカゲザルの性成熟、交配実験、その後に観察・屠殺を行った。腎組織が観察可能な各群の仔アカゲザルはそれぞれ28,26,29頭で、合計83頭であった(表)。 3. 仔アカゲザルにおける腎病変の頻度:1度目の交配で生まれた仔アカゲザルをF1a(各群16、13、17頭で合計46頭)、2度目の交配で生まれた仔アカゲザルをF1b(各群11、10、11頭で合計32頭)、3ng/kgBWの投与を含む追加実験で生まれた仔アカゲザルをF1c(各群1、3、1頭で合計5頭)とした。腎病変の出現は、300ng/kgBWを投与された母体から生まれた仔アカゲザルにのみ29頭中17頭(58.6%)(F1aで11/17、F1bで5/11、F1cで1/1(腎病変陽性頭数/検索頭数))で認められた。 4. 病変の程度は様々であるが、腎皮質表層に限局した軽度の病変が多く、腎萎縮および腎機能不全を伴う腎全体の高度病変は低頻度であった。 5. 障害部位の同定:免疫組織化学的検討で近位尿細管の脱落と糸球体の形成不全が目立つが、高度な病変では遠位尿細管なども脱落し、腎乳頭萎縮や間質線維化もみられ、ネフロン単位の脱落および形成不全と判断された。 6. ヒト疾患との類似性:近位尿細管の脱落が目立つため、ヒトのtubular dysgenesisとの関連を疑ったが、局所的病変が多く、近位尿細管のみでなく遠位尿細管の脱落もみられることから、ヒトのrenal dysplasiaに近い病変と思われた。 7. 障害機序:レニン陽性細胞の増加と糸球体内異所性出現がみられたが、病変部に限局しており、腎全体におけるレニン・アンギオテンシン系の異常を示す所見はなかった。 8. mRNAの網羅的発現解析:病変腎におけるkallikrein 1、podocin、Wilms tumor 1mRNAの発現減少、osteopontin、uroplakinmRNAの発現増加が明らかとなった。 9. microRNAの解析結果:投与群F1aのオス腎組織においてmir-141,192,200cの増加が明らかにされた。
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