研究概要 |
神経芽細胞腫Neuro2A、線維芽細胞NIH 3T3、腎近位尿細管上皮HK-2の各株化細胞を用いて、パラコート、メチル水銀(MeHg)、カドミウム(Cd)の細胞毒性を比較した。24時間曝露で生存能が50%低下するEC_<50>を求めたところ、Cdは50μM近傍に収束したが、MeHgでは0.5~8μM、パラコートでは320~4,000μMの範囲に分布した。また、EC_<50>下24時間曝露の半致死条件での難溶性ユビキチン(Ub)化タンパクの細胞内量を調べたところ、Cdでは全細胞において、メチル水銀ではHK-2細胞で顕著に増加したが、他の組合せでは明確な変動を認めなかった。従って、化学物質による細胞内タンパク質の異常化の検出に現時点ではHK-2細胞が最適と判断される。今後、肝細胞系細胞での検討を加味し、最終的なモデル細胞株を選定する。 難溶性Ub化タンパクの測定法に関しては、試料調製時の過剰SDS除去作業の簡略化に着手し、2日間の工程を1日に短縮した。ELISAの迅速化が今後の課題である。また、Ub化タンパクの新規標準品を設定するため、各種Ub鎖『RP1(旧標品)、K48-Ub_5(Ub 5分子のK48型鎖)、K63-Ub_8(Ub 8分子のK63型鎖)、Ub_<10>直鎖(Ub 10分子の直鎖)』の交差反応性を解析した。その結果、8分子以上のUbで構成される何れのUb鎖も1~100ng/mlの範囲で検出され利用可能と判断されたため、性状が明確で入手も容易なUb_<10>直鎖を標準品とするプロトコールを作成し、定量値の定義を明確化した。 LC-MS/MS分析においては,ペプチド断片化酵素としてトリプシンやリシルエンドペプチダーゼ等の比較、磁気ビーズ抗体法を用いた試料中の主要夾雑物除去など試料前処理の検討を進め、数μgの試料から50種以上のタンパク質成分の同定を可能した。
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