研究概要 |
環境化学物質と紫外線との複合作用で新たに生じる変異原性について研究を進めている。タバコタールには多環芳香族炭化水素やニコチンなど生体内で代謝されて変異原性を示す物質が存在することはすでに報告されているが、副流煙タールに近紫外光(UVA)照射することでこれまで知られていなかった変異原性が現れることを見いだした。そのメカニズムを明らかにすることを目的とする。我々は、受動喫煙として問題となるタバコの副流煙タールに紫外線(UVA)を照射する事で新たに現れる変異原性について解析を行った。タバコタールは国際標準モード(ISO法)で主流煙と副流煙とに分けて捕集した。タールの変異原性はサルモネラ菌及び大腸菌を用いた復帰突然変異試験で、代謝活性化を行わない条件下で調べた。 WP2uvrA/pKM101株の菌液とタールの混合液にUVA照射(230μW/cm2,10~30分)することで変異原性が著しく増強された。この光変異原性は、主流煙タールよりも副流煙タールのほうが強く現れた。一方、TA100、 TA98株では顕著な増強は認められなかった。タール含量の異なるタバコ(セブンスター、マイルドセブンワン)で較べたところ、その比活性は同程度であったが、低タールタバコのピアニッシモワンでは高い比活性が認められた。タバコの銘柄により比活性は具なっていたが、タール含量との相関はなかった。光変異原性はWP2uvrA/pKM101株で検出されたが、TA100株では見られなかったことからA:T塩基対での量換変異が起きていると推定された。また、あらかじめUVA照射したタールでは変異原性は検出されなかった。 タバコ副流煙タールには従来考えられていた変異原以外にも、UVA照射によって変異原性を示す物質が含まれていることが判明した。次年度からは、メカニズムの解析を行う予定である。
|