研究概要 |
本研究では,「発がん性物質によるタンパク質の修飾とその生体影響」を明らかにすることを目標とする。特に新規発がん性物質である3-ニトロベンゾアントロン(3-NBA)や大気中の発がん性物質として広く知られているベンゾピレン(以下 BaP)などを用い,(1)タンパク質(アミノ酸)-発がん性物質の構造未知の付加体の化学構造の決定,(2)発がん性物質の「化学構造,反応性の違い」と「タンパク質付加体の生成条件,種類」との関連,(3)生体試料中の標的タンパク質および修飾アミノ酸の位置の同定といったこれまで未解明の問題を解明し,さらに(4)タンパク質付加体の細胞内観測を行うことを目的とする。本年度は3-NBAの代謝活性化体であるN-acetyl-3-hdroxyaminobenzanthroneとトリプトファンとの反応,およびピストンとの反応について検討を行った。トリプトファンとの反応では,LC-MSによる解析により,いくつかの付加体ピークを確認することが出来たが,末端アミノ基との反応生成物が確認されたため,アミノ基を保護した基質が今後の解析に必要であることが分かった。一方,ヒストンとの反応では,反応後回収した,ピストンが化合物によると推定される着色を示したが,トリプシン処理後のHPLC解析では有為な付加体ピークを見いだすことが出来なかった。そのため,今後,タンパク質の量や加水分解方法について,詳細な検討をおこない,付加体のピークの同定を行なう。
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