本研究では、自然エネルギーを有効に利用して高効率で蓄電する新しい素子を開発することを目的として、生体機能物質による自己組織化法や基板のナノ構造制御技術を駆使することにより、従来の技術では蓄電容量に限界のあったキャパシタを大容量かつ急速充電・放電が可能な新しいエネルギー貯蔵システムとして活用することを目指して研究を進めた結果、以下のような結果を得た。 1)メソポーラスカーボン素子の構築 炭素電極基板を焼成するときに、シラン分子を混合して加熱することで、炭素基板の中へ1nm以下のサイズのネットワーク構造を構築した。このシラン分子のネットワークをウェットエッチングすることで除去し、炭素電極基板に2-3nm以下のメソ孔を作製した、通常、メソ孔の内部は疎水性であるため、溶液がメソ孔の内部へ入り込まないため、有効に使う事が出来なかったがプラズマ処理を行うことで親水基を導入することを試みた。その結果、メソ孔内部も有効に使うことができる炭素電極基板を作製することに成功した。 2)炭素基板上の自己組織化単分子層の構築 これまで機能性分子による自己組織化単分子層を作ることができる基板は金属と硝子の表面に限定されていた。本研究では、炭素基板の表面へ機能性分子を導入することでエネルギー貯蔵技術問題をブレイクスルーさせることを目指した。はじめに、炭素基板へ電位を印加することで、機能性分子と炭素基板が化学結合を作ることを見出した。生体機能性分子同士の相互作用を強くするために、長い直鎖のメチレン鎖を有する分子を使うことで、炭素電極基板の表面で凝集させることができた。走査型トンネル顕微鏡で表面を観察した結果、この機能性分子が炭素基板表面に最密充填の単分子層を形成していることがわかった。末端がメチル基の機能性分子を配列させると0.22nm間隔で均等に配列し、また、末端がカルボキシ基の機能性分子は隣の機能性分子と水素結合を作り、対の構造を形成していることがわかった。
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