環境面や医療面において多大な問題を引き起こしている、微生物が形成する生物膜(バイオフィルム)の除去は、現在、強力な薬剤の使用や物理的な洗浄に頼っている。この従来の手法に代わる新技術として、我々は細胞間情報伝達機構(Quorum Sensing)を阻害することによるバイオフィルム形成制御の手法の開発を進め、一定の成果を収めてきた。そこで、本研究課題では、より一層効果的なバイオフィルムの形成阻害技術を確立するために、Quorum Sensingに関わるシグナル物質を積極的に分解する技術を確立し、Quorum Sensingを阻害することによる新たなバイオフィルム形成制御技術の開発を目的としている。 今年度は、グラム陰性細菌のQuorum Sensingシグナル物質であるアシル化ホモセリンラクトン(AHL)の分解細菌のスクリーニングを行なった。その結果、植物葉面細菌より種々のAHL分解細菌の取得に成功し、その同定を行なった。 さらに、AHL分解能を有する新規化合物として、アミノ酸残基を導入した修飾シクロデキストリンの合成を行ない、AHL包接能、分解能について検討を開始した。
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