研究課題/領域番号 |
22510081
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
池田 宰 宇都宮大学, 工学研究科, 教授 (40151295)
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キーワード | バイオフィルム / バクテリア / 細胞間情報伝達機構 / クォーラムセンシング / N-アシル-L-ホモセリンラクトン / 阻害剤 / AHL分解酵 / 遺伝子発現制御 |
研究概要 |
環境面や医療面において多大な問題を引き起こしている、微生物が形成する生物膜(バイオフィルム)の除去は、現在、強力な薬剤の使用や物理的な洗浄に頼っている。この従来の手法に代わる新技術として、我々は細胞間情報伝達機構(Quorum Sensing)を阻害することによるバイオフィルム形成制御の手法の開発を進め、一定の成果を収めてきた。そこで、本研究課題では、より一層効果的なバイオフィルムの形成阻害技術を確立するために、Quorum Sensingに関わるシグナル物質を積極的に分解する技術を確立し、Quorum Sensingを阻害することによる新たなバイオフィルム形成制御技術の開発を目的としている。 今年度は、昨年度に引き続き、グラム陰性細菌のQuorumSensingシグナル物質であるアシル化ホモセリンラクトン(AHL)の分解細菌のスクリーニングを、様々な試料を用いて行なった。その結果、植物葉面細菌に加えて、植物根面細菌、そして、下水処理場で用いられている活性汚泥中より種々のAHL分解細菌の取得に成功し、その同定を行なった。活性汚泥中からのAHL分解細菌の取得と同定はこれまでに例がない。 一方、AHL分解能を有する新規化合物として、種々のアミノ基を導入した修飾シクロデキストリンの合成を行ない、その分解能について検討を行なった。アミノ基修飾シクロデキストリンは、比較的短時間でAHLのラクトン環の開裂を引き起こすことが示された。AHL分解能を有する化合物の合成は、今まで報告されていない。 バイオフィルム形成実験については、フローセル系での実験系を確立し、静置系との比較検討を開始した。これまで、直接の比較検討例はほとんどなく、成果が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の環境試料中より、Quorum Sensingシグナル物質であるアシル化ホモセリンラクトン(AHL)の分解細菌の単離と同定に成功した。特に、活性汚泥中からの取得は初めての報告である。また、AHL分解能を有する新規化合物の合成に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
さらに多くの環境試料中よりQuorum Sensingシグナル物質であるアシル化ホモセリンラクトン(AHL)の分解細菌の単離と同定を進め、利用可能な酵素の単離や微生物の直接利用を検討する。また、AHL分解能を有する新規化合物の合成も継続し、実用化への条件を検討する。
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