現在までに気相における放電プラズマは数多くの研究報告例が存在するが、水中(液相)での放電プラズマを用いた報告例はほとんどない。そこで水中で放電プラズマを作用させるために検討されているのが気液混合相での利用である。本研究ではマイクロバブルと放電プラズマ反応器を組み合わせたシステムを提案した。水処理で効果があるとされているマイクロバブルをSPG膜(Shirasu Porous Glass)により発生させ、らせん状に巻いた二重ワイヤー電極間に導入するシステムとなっている。本システムは水処理において難分解性の有機化合物の分解と殺菌を同時に行うことを目的に試作したものである。難分解性有機化合物のモデルとして界面活性剤LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)とBAS(牛血清アルブミン)などのタンパク質の分解除去、および大腸菌の殺菌を試みた。残念ながらそれぞれの系に対しマイクロバブル単独ではなんら効果は認められなかった。一方で、高電圧パルス電圧をらせんワイヤ電極に印加するとマイクロバブルが放電プラズマのトリガーとなり、比較的安定した放電プラズマを発生が確認でき、水中バブル放電プラズマによるLASやBAS、大腸菌由来タンパク質の分解を実証している。 また本研究では装置が簡便でメンテナンスしやすく、また試料だまりに投げ込んで使用できる装置を開発し、この装置の放電特性と実用性について調査研究を行い、以下の結果を得た。(1)投げ込み式放電ユニットによる放電プラズマの発生はエアー流量に依存する。最大放電頻度はエアー流量が6L/min以上で200回/sであった。(2)投げ込み式放電ユニットによる放電プラズマの発生は溶液の導電率に大きく依存した。またこの放電頻度を予測する近似式を提案した。(3)インジゴカルミンの脱色およびLASの分解効率はエアー流量4L/min以上(放電頻度150回/s以上)で最大となった。
|