本研究課題は水中で安定かつ簡便に放電プラズマを発生させることと、この殺菌や有機物分解への応用の可能性を評価した。電極を試料だまりに直接設置して放電を発生させる投げ込み式電極システムを開発した。バブルを発生させるための流入ガス流量が大きいほど放電頻度は高くなることが確認された。試料の導電率が高いほど、放電頻度は低くなることが確認された。エアー流量、導電率のパラメータより、放電頻度を計算する近似式が得られた。染料インジゴカルミンの脱色および難分解性であるLASの分解が可能であることが示された。LASの分解は、電子衝突による作用が大きいことが示された。これらのことから、投げ込み式電極は水環境汚染を低減するプロセスの一環として有用であることが期待される。またこのシステムの試料だまりへの殺菌処理を試みた。投げ込み式放電ユニットによる放電プラズマにより大腸菌が殺菌可能であり、比較的短時間で高い殺菌効果が得られた。ラジカルスカベンジャーを用いた実験結果から,ラジカルの関与による大腸菌の殺菌割合は最低42%程度であった。大腸菌に比べ長時間の処理時間が必要となるが,投げ込み式放電ユニットによる放電プラズマにより枯草菌芽胞が殺菌可能であることが示された。紫外線の透過を制御しても殺菌効果は変わらなかったことから、水中放電プラズマで発生する紫外線が微生物殺菌に与える影響は少ないことが明らかとなった。初発菌体濃度の上昇に伴って殺菌効率が低下するのは、死細胞がプラズマに影響を及ぼすためであり、死細胞の中でも、可溶性画分が殺菌効果を低下させていることが確認できた。これにより、投げ込み式放電ユニットを用いた放電プラズマによる微生物殺菌メカニズムとして考えられるファクターは、OHラジカルをはじめとする反応性や酸化力の高いラジカルであることが示された。
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