研究概要 |
本研究では,環境に低負荷で低コストであるバイオマスを用いて,重金属や放射性核種など汚染物質を除去・回収する手法を確立して環境浄化に役立てると同時に,レアメタル等の資源の安定供給の課題の解決の一助となることを目指している。本年度では,バイオマスにおける希土類元素(REEs)やウラン(U),トリウム(Th)の取り込みや吸着に関するモデル実験を継続するとともに,環境中の重金属や放射性核種の動態把握のため,土壌やスラッジ中のREEs,U,Thの挙動やバイオ界面活性剤なども併用した金属除去方法の検討を行った。さらに放射性核種として,U,Thのみならず水素の放射性同位体であるトリチウム(T)の環境中の挙動についても検討した。その結果,主として以下のことが明らかになった。(1)海藻および貝殻バイオマスによるREEs吸着は,総じてLangmuir吸着等温線に適応し,単分子層の吸着の傾向が強い。(2)貝殻によるREEs吸着は,蛋白質を含んだ隙間の部分で支配的に起こる可能性が大きい。(3)土壌における希土類元素濃度(あるいは希土類パターン)は,採取地点間で差異が見られた。これは,鉄-マンガン酸化物や有機炭素量(遊離酸化物や有機物との親和性)等の土壌の性質に関連すると考えられる。(4)スラッジ中の重金属濃度は,天然の農耕土壌中濃度に比べて一般に高い。(5)スラッジ中の重金属の分布特性は土壌中の重金属と類似しているが,残留態の割合は,スラッジ中の方が低い。(6)バイオ界面活性剤のうち,サポニンは,特にスラッジからの重金属除去に効果的であった。(7)降水中のT濃度の年間変動は,カルシウムイオン濃度の変動と類似している。(8)台風における降水中のT濃度からも,台風による降水には海洋性気団の特徴が強く見られることがわかる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度においても,22年度同様に当初の計画で予定していた内容の検討は概ね完了しており,成果も,まずまず順調に得られており,論文発表や学会発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
研究体制も含めた本研究課題の今後の推進は,基本的に当初の計画に基づいて行う。ただし,平成24年度は最終年度になるため,研究成果をよりまとまった形(論文発表,学会発表のみならず図書のChapter等)で発表することも検討している。
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