研究概要 |
環境に低負荷で低コストであるバイオマスをベースにした吸着剤を用いて,重金属や放射性核種などを除去・回収する手法を確立して環境浄化に役立てることを目的とする。現在,希土類元素等の重金属は幅広い産業分野で利用されており,需要が拡大しているものの,国内では資源枯渇の危機にある。そこで,廃棄物等からの新たな金属回収法の確立も重要である点に着目し,バイオマス等を金属の吸着剤として利用し,資源回収に役立てることを目指した。 本年度では,新たにキチンをベースにしたキトサンを用いて,ウラン(U)やクロム(Cr)の取り込みや吸着に関するモデル実験を行った。また,環境中の重金属や放射性核種の動態把握のため,土壌やスラッジ中のREEs, U, Thの挙動把握に関する研究を継続するとともに植物,キレート剤やバイオ界面活性剤を用いて,重金属の効率的な回収方法を確立することを目指した。さらに放射性核種としてUのみならず水素の放射性同位体であるトリチウム(T)の環境や生体中の挙動についても検討した。 その結果,主として以下のことが明らかになった。(1)キトサンによるCr吸着において,3価のCrはpH6以上で良好な吸着率を示し,6価のCrはpH4で最大吸着量を示した。 (2) 3価および6価のCrは,いずれもLangmuir plotにより適合することから,単分子層による吸着傾向が強いと推察される。(3) キレート剤は根から茎葉部への重金属(亜鉛と鉛)移動を促進する。(4) キレート剤は,概して植物バイオマスの生長を抑制したが,生分解性のキレート剤EDDSにおいてもその傾向が見られた。(5)アミノ基のH原子はトリチウム(T)原子と定量的に交換するが,この反応はアミノ基が付いている母体構造に大きく依存する。(6)降水中のT濃度とカルシウムイオン濃度との変動は類似しており,特に非海塩型気団で顕著である。
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