研究概要 |
平成22年度は海洋性アナモックス細菌の集積培養系の確立を目的として、広島湾から採取した底泥を植種源とした上向流カラムリアクターを運転した。底泥は各態窒素濃度や水温、溶存酸素濃度などの測定結果から判断して、湾奥部と湾中央部から採取し、それぞれ別のリアクターに植種した。リアクターには不織布を担体として用い、人工海水に窒素成分を加えた人工排水を通水し20℃で運転した。その結果、湾奥部から採取した底泥を用いたリアクターでアナモックス反応を確認できた。リアクター内のバイオマスも徐々に茶色から赤色に変化した。リアクター運転開始から114日目に亜硝酸性窒素除去率が97%に達し,流出水の亜硝酸性窒素が枯渇し始めた。そのため,流出水の亜硝酸性窒素濃度が1.OmgN L^<-1>以下となるのを目安に,流入アンモニア性窒素・亜硝酸性窒素濃度を上げることで流入窒素負荷を上昇させた。さらにHRTを短縮させた結果,最大窒素除去速度2.06kgTN m^<-3> day^<-1>を達成した。アナモックス細菌を対象とした系統解析の結果、海洋性アナモックス細菌であるCandidatus Scalindua属に近縁なクローンが多く検出された。得られた塩基配列に基づき、ARBプログラムによりFISHプローブを設計し、可視化を試みた。その結果、系統学的に異なる細菌グループを検出できる二種類のFISHプローブを設計することができた。本集積培養系には少なくとも系統学的に異なる二種類の海洋性アナモックス細菌が存在していることが明らかとなった。
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