研究概要 |
環境負荷低減や食の安全に対する意識が高まる中,道路や護岸工事および漁場造成事業等に使用されるコンクリート製品は,再生資源の循環利用先への期待が高まっている.本研究は,再生資源の中で未利用,低利用であるが,再利用の促進かつCO_2削減により環境負荷を低減させ,同時にコンクリート製品への利用方法を定量的に確立させることを目的に,新たな機能を付加したコンクリート製品の製造を可能とする材料を見出すものである.その上で,産業副産物の有効利用による環境負荷低減型基質を開発し,その有効性を実証した. 再生材料(鉄鋼スラグ)を適切に組合せ,ブロックの空隙率を制御し,粒度,配合,基質製作用型枠を設計・検討した.これにより製作した多孔質ブロックは,既存の多孔質ブロックと比べ,保水性に優れ,価格的には同等以下,強度的には同等以上かつ長時間の路面温度低減効果を有することを確認した.また,使用済み製品を回収後,粉砕し,骨材として再利用可能であることも確認した.本多孔質体を1t製作するのに約100kgのCO_2削減に繋がる. 本研究で使用する鉄鋼スラグに珪酸(SiO_2)が多く含まれていることに着目し,アオコ発生が顕著なため池を対象に,スラグ利用基質と既存の骨材利用基質を水中に浸して溶出試験を行い,珪素の溶出量および藍藻類,珪藻類の現存量を定量的に評価し,本基質の生物優占種制御機能の優位性を検証した.また,海域においては夏期の赤潮,貧酸素水塊の発生に伴う環境悪化対策,稚魚放流後の歩留まり向上対策へ本技術を適用することを考え,従来の漁場造成事業で使用されている増殖基質に比べ,経済的にも品質的にも同等以上で,水産資源生産力に優れ,しかも天然無機素材の混入により底泥中の金属類を吸着可能とした,高度な環境改善機能を有することを確認した.これらの結果より,既存技術に対する優位性,競争力の強さを実証した.
|