下水汚泥の減量化および資源化に関する研究の展開で、高温で余剰汚泥を溶解する細菌および乳酸菌の新菌種と考えられる菌株を発見した。本課題では、60℃前後で下水余剰汚泥を溶解し、32℃以下では活動を休止する新規細菌株を用いて、下水余剰汚泥の減容化を図ろうとするものである。さらに、溶解した余剰汚泥から、乳酸菌による乳酸生産を行う。また、大腸菌による水素生産と酵母によるバイオエタノール生産について、その資源化の可能性を探ることも研究目的とし、次の成果を得た。 1.分離した高温性汚泥溶解菌Anoxybacillus sp. MS8株とBrevibacillus sp. MH10株を用いて余剰汚泥の減容化を検討したところ、滅菌汚泥では約30%、未滅菌(生)汚泥では約3~5%の汚泥減量率を示した。 2.これらの菌株では生汚泥の減量率が低いことから応用・実用化に向けて研究を展開できないと考えられるので、更なる高温性汚泥溶解菌の分離を行い、16株を取得した。さらにアルカリ耐(依存)性汚泥溶解菌の分離も行い、9株を取得した。 3.次に、溶解した余剰汚泥にショ糖50mMを添加し、分離・同定したLactobacillus acidophilusで乳酸発酵を5日間行ったところ(確立した最適化条件)、対象と比較して約7.5倍の乳酸生産に成功した。 4.また、溶解汚泥から分離した水素生成菌を用いて水素発酵を行い、対象と比較して約30倍の水素生成を確認した。
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