研究概要 |
電気分解の原理を応用した医療廃液の不活化技術を確立するため,今年度は以下の点について検討し,成果を得た。 (1.抗菌薬含有医療廃液の不活化について)、ベンチトップレベルの小規模実験において,各系に含まれる代表的な抗菌薬単剤およびその混合物に対して電解による処理を行った結果,すべての試料において不活化効果が見られた。さらに代表的薬剤について分解メカニズムを明らかにした。この結果より抗菌薬含有医療廃液を電解により不活化できる可能性が示された。本成果は論文原稿としてまとめ,投稿した。しかしリジェクトされたため,査読者のコメントを検討して追加実験をすすめ,再投稿の準備中である。 (2.尿中抗癌剤の不活化について)尿に含まれる抗癌剤を電解処理で不活化できるか確認するため,健常人尿サンプルにメソトレキセート(MTX)を溶解させたサンプルを用いて評価した。その結果,尿に含まれる爽雑物によってMTXの分解が阻害されることが明らかになったが,その阻害効果はサンプルを希釈することで容易に阻却できることが明らかとなり,電解処理を尿中抗癌剤の不活化に応用できる可能性が示された。本成果は原著論文にまとめ,発表した。 (3.抗インフルエンザウイルス薬の不活化について)抗インフルエンザウイルス薬であるオセルタミビル(タミフル)について電解処理によって不活化できるか確認するため,HPLCによる解析,ウイルスノイラミニダーゼ活性阻害効果の不活化等を指標として評価した。その結果,オセルタミビルリン酸塩およびその活性代謝物の両者において不活化効果が見られた。この結果は現在論文発表を準備中である。 ☆11.欄以外の成果:ヨーロッパ特許出願維持中1件 ★連携研究者:大阪医科大学・医学部・助教:呉 紅
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的1に関しては,抗生物質の分解に関して国際学会で発表できた。論文に関しては投稿したがリジェクトされたため,コメントを検討して追加実験を実施し,現在再投稿の準備中である。抗ウイルス薬については現在投稿準備中である。目的2,3については本年度発表した論文によってほぼ達成できたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
全体的には,ほぼ当初の計画通りに推進してよいと考える。抗生物質の分解に関する論文原稿に対する査読者のコメントのひとつとして,電極の材質を含めた電解条件の最適化があり,これに関しては次年度に予備実験を行い,あらたなプロジェクトとして行うべきかを検討する必要があるものと考える。
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