オゴノリ属海藻を河口に近い河川より6月に採取した。天然海藻試料、培養海藻試料、海藻採取域の環境海水をそれぞれ滅菌人工海水で適宜10倍希釈し、寒天培地に添加し、20℃で14日間培養した。培養後、寒天培地中のコロニー数100程度の平板を選定し、各寒天平板の生菌数(微生物数)カウント及び微生物の形態・色素でグループ分けを行った。培養平板上に優勢に生育した集落を釣菌して分離微生物とした。培養海藻試料を添加した寒天培地には黄色や橙色のコロニーが観察され、その性状よりFlavobacterium/Cytophaga sp.と推定できた。天然海藻試料、培養海藻試料、海藻採取域の環境海水中の微生物群集は同じでないことを示した。このことは海藻付着共存する微生物群集が環境海水中の微生物群集と異なっていることを示唆する点で意義のある結果である。 海藻と介在微生物との共存関係解明には海藻を純化した単藻培養株を用いる必要がある。すでにオゴノリ属海藻の単藻培養株調製技術を確立し、調製した株を保存単藻培養株として保管維持できている。そこで当該調製技術を活用し、平成22年度に介在微生物検索に用いた天然海藻試料由来の胞子から単藻培養株を新たに調製した(新規単藻培養株)。新規単藻培養株は本年度を通じて保存培養を可能だった。平成22年度に介在微生物検索に用いた天然海藻試料由来の胞子からの単藻培養株を獲得したことは、海藻と微生物の共存関係を研究する上で意義がある。またオゴノリ保存単藻培養株の再生力が非常に強いことを利用した海藻生長促進培養も達成した。この成果は本研究目的である生育時期のそろった海藻の大量供給達成に寄与可能である。海水と接触しても壊れにくく浮上性も維持できる微生物用担体を調製した。この担体は平成23年度以降予定の各再構成共存系(海藻-海藻付着共存微生物共存系)での海藻生長評価を行う際に有用である。
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