研究課題/領域番号 |
22510096
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
垣田 浩孝 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (40356754)
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キーワード | 海藻 / 水圏環境浄化 / 海洋資源 / 植物 |
研究概要 |
試料に介在する微生物数は天然海藻試料で10^5/g~10^6/g、培養海藻試料で10^6/g~10^7g、環境海水で10^3/ml~10^5/mlであった。介在微生物を塩要求性(生育に海水が必要な微生物と海水でも生育するが1M塩化ナトリウムでも生育可能な微生物)に区別後、微生物の形態・色素でグループ分けをした。天然海藻試料では1M塩化ナトリウムでも生育可能な非発酵性グラム陰性桿菌と生育に海水が必要な非発酵性グラム陰性桿菌がほぼ同数(10^6/g)で一番多く、培養海藻試料では生育に海水が必要な非発酵性グラム陰性桿菌が飛び抜けて多いこと(10^7/g)を明らかにした。この結果は2年とも同様であった。このことは海藻に付着共存する微生物群集菌相が海藻培養中に変化することを示唆している点で意義のある結果である。 環境海水の有意な微生物は主にMoraxella sp.であり、天然海藻に付着共存している有意な微生物は主にVibrio sp.及びMoraxella sp.であった。一方培養海藻に付着共存している有意な微生物群集には寒天培地に黄色など色素集落を形成する微生物が含まれ、それらは性状よりFlavobacterim/Cytophaga sp.と推定できた。この結果も2年とも同様であった。培養海藻試料からはその他にPsedomonas sp.、Alcaligenes sp.、Moraxella sp.、Alteromonas sp.などが検出された。 また昨年度開発した切片増殖法を東京湾産オゴノリ属海藻に適応し、海藻生長促進培養を達成し、切片増殖法は成育時期のそろったオゴノリ属海藻を大量に得るための有用な手段であることを示した。 水中で固定して使用する微生物用担体(繊維)の引っ張り強度を延伸処理により2倍向上できた。延伸処理担体は海藻-海藻付着共存微生物共存系での海藻培養において有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで2年間の研究により、培養海藻に付着共存している微生物群集菌相は、環境海水中に存在する微生物群集菌相及び天然海藻に付着共存している微生物群集菌相とは異なっていること、培養海藻に付着共存する主な微生物群集はFlavobacterium/Cytophaga sp.に分類されることなどを明らかにした。研究は天然海域では実現できない海藻-海藻付着共存微生物系での培養実験段階に現在入っている。以上のことから研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り実施する。平成24年度は最終年度であるので、最適な再構成共存系(海藻-海藻付着共存微生物共存系)の選抜及び最適な再構成共存系の20リットル規模の培養により生育時期のそろった海藻の大量供給を目指すと共に、得られた海藻による栄養塩低減効率の良い水圏環境浄化技術の実証等を実施する。
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