本研究では、時限型易生分解性ポリプロピレン(PP)の作製を目的とする。ジカルボン酸イオンを挿入した8リン酸カルシウム(OCPC)で光触媒能を持つTiO_2表面を部分修飾してポリエチレンオキシド(PEO)に含有させる。結晶水とTiO_2表面の非修飾部との光反応がトリガーとなりPEOが徐々に分解されてPPの自動酸化劣化を活性化する酸・アルデヒドを放出させる。放出した酸は表面のジカルボン酸を内包するOCPCも溶かすので、反応が徐進むにつれて酸の放出量を増加させ、PPの自動酸化劣化を加速度的に進ませる(時限分解性)。これをPPに添加することで太陽光下PPの自動酸化劣化を自発的に加速させる仕組みを持たせ、所定の時間後に、直ちに微生物が代謝可能な低分子量体への持続的な分解反応を開始させる二段階の過程による生分解性の発現を試みた。方法としては、光劣化後に土中埋没試験を行い、前後でIRスペクトルの変化を調べた。OCPCの存在は、第一段階の光劣化において、誘導期が観測され、その後、急激に劣化が進行する"時限分解型"の狙い通りの劣化挙動が観測できた。土中埋没試験後、PP/PEO/TiO_2およびPP/PEO/OCPC/TiO_2両サンプルにおいてPPの光劣化生成物であるカルボニルのピーク(1718cm^<-1>)および酸素不足のPP劣化の際に生成する不飽和エチレン(1642cm^<-1>)のピークが、消失が観測され、微生物による代謝も確認された。走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、PP/PEO/OCPC/TiO_2サンプル表面上で真菌類による菌糸のネットワーク構造が確認でき、PP/PEO/TiO_2サンプル表面よりさらに激しい生物浸食挙動が観測された。この激しい浸食挙動については、次年度で検討を行う予定である。
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