研究課題/領域番号 |
22510097
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
中谷 久之 北見工業大学, 工学部, 教授 (70242568)
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キーワード | 生分解性 / ポリプロピレン / 酸化チタン / 八リン酸カルシウム / 複合材料 / セルロース |
研究概要 |
前年度に引き続きポリプロピレン(PP)の生分解化用光酸化分解促進剤の開発を行った。ジカルボン酸イオンを挿入した八リン酸カルシウム(OCPC)でTiO_2表面を部分修飾してポリエチレンオキシド(PEO)に含有させた改良型光酸化分解促進剤を使用したPPでは、光分解後に生物浸食挙動が観測された。その理由として、OCPCが酸化時に溶解して微生物の活性化を促す可溶性リン酸成分が供給されるためと推定した。 続いて、近年、注目を集めているPPと豊富なバイオマス資源である繊維状セルロース(FC)との複合材料の生分解化への適用を行った。.使用した光酸化分解促進剤は未修飾タイプ(PEO/TiO_2)を使用した。光酸化PP劣化の指標の1つであるカルボニル基の増加量について、PPにおいては6時間の照射を行ってもカルボニル基の増加は起こらず劣化じていなかったがPEO/TiO_2を添加したPP/FC複合材料(PP/FC/PEO/TiO_2)の場合では、照射時間が経過するにつれ、カルボニル基の増加が確認された。しかしながら、FCの含有量が5wt%以上では、光の透過率が極端に低下するため、光酸化分解の速度が大幅に低下した。微生物による生分解についてPP/FC/PEO/TiO_2サンプルを24時間光劣化させた後、28日間土壌に埋める実験を行った。土壌劣化前後でのFT-IRスペクトルを比較したところ、PPの劣化生成物であるカルボニル基のピークが土壌劣化後には生分解を受け消失していた。また、土壌劣化後のサンプルのSEM観察でも菌の付着が見てとれ、染色したサンプルの顕微鏡写真でも、Curvularia属とみられるリボン状の隔壁をもつ菌が見られた。以上のことからPP/FC複合材料に生分解性が付与されたことに成功した。以上の結果、PP/FC複合材料に対して、FCの含有量に制限があるが、本光酸化分解促進剤による生分解化が可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目標であった時限型易生分解性PPの作製には、成功し、現在はその先にある複合材料や他の高分子材料への本光酸化分解促進剤適用、さらには、木質材料におけるリグニンの選択的分解にも本光酸化分解促進剤を利用することも行っており、すでに一部成功している。
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今後の研究の推進方策 |
PPだけでなく他の汎用性高分子や木質材料に本光酸化分解促進剤を簡易な形で適用できるように改良・開発を行う。十分な分解性能まで高め、新たなプラスチック・木質系廃材の処理システムの開発に繋げる。
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