昨年度までの成果で、気泡表面電位が気泡収縮挙動に影響を及ぼし、収縮パターンを大きく3つに分類することができた。この結果から、表面電位の影響で気泡寿命に違いが生じる理由を明らかにした。さらに、イオン交換膜により分離されたセルを製作し、マイクロバブルが水中のイオン濃度に及ぼす影響から、浸透圧に変化のでる理由を調べた。 つまり、気泡表面電位の高い気泡で、RO膜の透過効率が上がり、取りだせる真水の量が増加した理由を調べた。測定用のセルは、陰イオン交換膜、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜、陽イオン交換膜の順番で正・負の電極の間を区切った。セル内の塩水は、濃度0.5%、1.0%、2.0%で実施した。 陽イオン交換膜を隔てたセルに、マイクロバブルを発生させたケースと陰イオン交換膜を隔てたセルにマイクロバブルを発生させた場合での、電気伝導度の変化を調べた。その結果、陽イオン交換膜を隔てセルにマイクロバブルを発生させた場合、マイクルバブルを発生させない場合と比較して、電気伝導が低下することがわかった。電気伝導度の低下は、塩濃度、つまりNa+イオンの減少を意味する。これは、負に帯電した気泡が、水中のNa+を吸着し、マイクロメータオーダの気泡はイオン交換膜を通過できなため、気泡に吸着したNa+が、膜を透過できず量が減少したたためである。こうした現象は、気泡表面電位が高いほど、より顕著だった。また、陰イオン交換膜を隔てたセルにマイクロバブルを発生させた場合は、電気伝導度の変化は確認できなかった。 こうして、気泡表面電位を高くすることで、RO膜の透過効率が向上した理由は、負に帯電した気泡が、水中の陽イオンを吸着することで、水溶液の浸透圧を低下させたためということがわかった。さらに、電位の高い気泡の寿命が長いということも合わさって、膜の透過効率が向上することになる。
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