研究概要 |
本年も昨年度と同様、測定、分析対象とした化合物は揮発性有機化合物(VOC)62種類とアルデヒド類17種類でVOCとアルデヒド類を合計したものをケミレスTVOC(総揮発性有機化合物)とし、千葉大学ケミレスタウン内で室内空気中の化学物質濃度を調査した。本年度調査した実験棟はA棟(軽量鉄骨構造と石膏プラスター内装仕上げ)、B棟(木造、ツーバイフォー構造)C棟(木材構造と杉材、火山灰内装仕上げ)の3棟6か所および公共施設を想定したケミレステーマ棟内の3ヶ所の室内である。臭気については、測定した室内の各化学物質濃度を嗅覚閾値濃度で除した値を臭気閾値比(Odor Threshold Ratio, OTR)と定義し、測定した室内におけるOTRと総OTR(TOTR)を算出した。上記の結果、TVOC、TOTRとも夏季に増加し冬季に減少、経年とともに減少する傾向がみられ、全体的に相関を示したが、TVOCが低くなると相関は弱くなった。OTRの低い物質は、濃度そのものが低くても臭いを感じやすいため、症状に影響している可能性がある。すなわち、TVOCが低くてもシックハウス症候群の訴えがある場合、TOTRが評価の基準となる可能性が推察された。そこで実際に室内空気質測定をした場所で健康なボランティアによる体感評価実験をおこない、TVOC,TOTRそれぞれで症状がでる可能性が高い値を統計的に算出した。その結果、TVOCで約400μg/m3以上、TOTRで40以上になるとシックハウス様の症状が出やすいということがわかった。この結果は、室内空気中の化学物質量のみならず、臭気もシックハウス症候群の発症の一因となっていることが推察される。つまり臭気閾値比は室内空気質を評価する一つの指標となりうること、また、新しい評価法の可能性があることが判明した。
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