研究課題/領域番号 |
22510102
|
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
前之園 信也 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (00323535)
|
キーワード | 熱電材料 / ナノ粒子 / Bi-Te / Zn-Sb |
研究概要 |
発電所、工場、自動車等で生産されるエネルギーの実に7割近くが廃熱として無駄に捨てられている。熱電変換素子を使って廃熱の一部でも電気工ネルギーに変換することができれば、エネルギーのリサイクルという観点から非常に効果的である。熱電素子の性能はZT=S^2σT/Kで表されるが(S:ゼーベック係数、σ:電気伝導率、K:熱伝導率、T:温度)、ZT値が2以上あれば熱電素子による発電(熱電発電)が実現できる。しかし既存材料は最高でもZT=1程度であり、熱電発電に用いることができない。ZT向上のためには高σと低Kを同時達成する必要がある。ナノ構造制御された熱電材料(ナノ熱電材料)は、フォノンとキャリアの平均自由行程の中間の周期で粒界を持つ構造を有するため、電気伝導を阻害せずにフォノンを選択的に散乱することでKを低減でき、大幅なZT向上が可能となる。 本年度は、バルク材料でも室温で高い熱電変換効率を示すことで知られているBi、SbおよびTeの合金[p型(Bi,Sb)_2Te_3]及びZnとSbの合金(n型ZnSbやp型β-Zn_4Sb_3)のナノ粒子を化学合成し、それらをビルディングブロックとして超格子構造を作製することによって、ナノグレインバウンダリーを有した高ZTナノ熱電材料を創製することに挑戦した。得られた成果は下記のとおりである。 1.前年度に合成法を確立したp型(Bi,Sb)_2Te_3のナノワイヤを用いて、塗布・加熱処理によって固体基板上にナノワイヤの高次構造を作製した。ゼーベック係数は+211μV/Kであり、バルク材料と遜色無い値を示した。電気伝導率や熱伝導率などの物性の精密測定は現在進行中である。 2.n型ZnSbのナノ粒子の合成方法を世界で初めて確立した。熱電特性の測定は現在進行中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画は、第一にBi-Sb-Te系(p型)の低次元物質を化学合成する技術を確立すること、第二にBi-Sb-Teナノ物質の超格子構造をウェットプロセスによって作製し、ナノ構造と熱電変換特性の相関を明らかにすること、そして第三にBi-Sb-Teナノ物質の量子サイズ効果およびその超格子における電荷移動過程について明らかにすることであった。第一の目的は当初計画よりも前倒しで達成した。第二、三の目的はほぼ達成したが、ナノ構造と熱伝導率との相関に関しては、熱伝導率の精密測定が当初予想よりも困難であることがわかったため、現在も検討を継続している。一方、当初の予定には無かったn型熱電ナノ粒子(ZnSbナノ粒子)の合成法を確立したことにより、p型およびn型の熱電ナノ粒子が揃った。
|
今後の研究の推進方策 |
高次構造と熱伝導率との相関を明らかにするため、熱電ナノ粒子をペレット化し、3ω法やPPMS-TTOを用いた熱伝導率の精密測定に取り組んでいる。また、(Bi,Sb)_2_Te_3ナノワイヤやZnSbナノ粒子の分散液を用いて、インクジェット法やナノインプリンティング法によって固体基板上にそれらの熱電ナノ材料をパターニングし、その熱電特性を測定する。
|