研究課題/領域番号 |
22510105
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
田中 美代子 独立行政法人物質・材料研究機構, 表界面構造・物性ユニット, 主幹研究員 (50354329)
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キーワード | 電子顕微鏡 / 金属/酸化物 / 走査トンネル顕微鏡 / SrTiO3 / 金属クラスター / 酸化・還元 |
研究概要 |
本研究では、金属クラスター・ナノ薄膜と酸化物の界面での酸素の挙動と界面構造や電子状態に与え影響を解明するため、透過電子顕微鏡内その場観察と走査トンネル顕微鏡観察を組み合わせ、超高真空から酸素分圧下、加熱や電圧印可等多彩な環境のもとで原子レベル観察を行い、界面構造の変化や挙動を解析することを目的としている。今年度は、NbまたはLaドープのSrTiO3(001)基板の表面状態を制御し、ここに種々のサイズのNiナノクラスターを作製、基板エッジと基板界面を観察するprofile-view法により評価し、またSTMにより形態観察や電気特性評価を行った。蒸着量が0.5Åの時、直径2nm、高さ0.3nm程度の均一なサイズのクラスターが形成されているのがSTM観察より分かった。これらのクラスターは半金属的な特性を示した。蒸着量を2A、10Åと増やすにつれ、クラスターのサイズは不均一となっていき、また、金属的な特性を示すようになった。これらと同サイズのクラスターをTEMでprofile観察すると、2nmサイズクラスターの場合、STMと同じく高さ0.3nm程度でサイズが均一であることが確認できた。これらのクラスターの構造は、下地とエピタキシャル成長しており、10%程度の格子不整合が存在した。一方、より大きなクラスターは様々なエピタキシャル関係を有しており、このことがサイズの不均一性を生んでいることが分かった。酸素雰囲気加熱により、これらのクラスターはNiOへと変化した。これらのクラスターは真空中で再加熱することにより金属的な性質へと戻り、酸化・還元過程を数回経てもクラスターとして存続することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年3月の大震災により、メインの実験装置である超高真空透過型電子顕微鏡(TEM)がかなり破損し、修理完了まで11ヶ月を要した。このため、TEMによる構造観察や、TEM内で行う予定であった環境変調観察に大幅な遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
TEM内での実験に遅れが生じているため、対象の系をNi-SrTiO3に絞り、まずは構造観察、環境変調観察のみを集中して行う。その後、進捗状況に応じてSTM観察や他の系の実験を検討する。
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