研究課題
本研究は多層グラフェンやナノチューブなどの炭素網面積層ナノ構造体に局所的な応力を加えることで層間距離や歪みなど層間の状態を変化させ、グラフェン層間の相互作用を明らかにすることを目的としている。積層グラフェン構造体としてグラフェンカップ積層型カーボンナノチューブに透過型電子顕微鏡中で圧縮や曲げ応力を加え、電気伝導性と構造の関係を明らかにした。カップ積層型カーボンナノチューブは底の抜けたカップ状構造を持ったグラフェンが積層した形状を取っており、通常のカーボンナノチューブとは異なる物性が期待されている。カップ積層型カーボンナノチューブは圧縮や曲げ応力により層間距離が変化し、積層構造にも変化が生じる。圧縮応力を加える事により電気抵抗率が2桁下がり、カーボンナノチューブやグラファイトa面と同等の抵抗率が得られた。繊維軸方向にはグラフェンカップが積層しているだけで導電パスが無いにもかかわらず、圧縮により大きく抵抗率が下がる現象が見られたことは大変興味深い。また、ホウ素添加やジュール過熱によりエッジがループ構造で繋がったカップ積層型チューブにおいては圧縮されたチューブと同等の抵抗率を示し、応力により抵抗率の変化は見られなかった。これらの現象と電子状態計算、電子エネルギー損失分光測定によるエッジの構造とπ電子密度の関係を検討したところ、チューブが圧縮される事でエッジ部でπ電子密度が大きくなり、ループが形成された時と似た電子分布が生じる事を見出した。また、フェルミ準位付近に新たな状態が発生し、導電性向上に寄与する事が明らかになった。積層間隔が小さくなる事により新たな導電機構が生じる事を解明した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nanoscale
巻: 4 ページ: 6419-6424
DOI:DOI:10.1039/C2NR30883E