研究概要 |
基板上に分散させた金属ナノ粒子は,水素分子から原子状水素の生成を代表とする触媒作用への応用や,表面増強ラマン散乱分光(SERS),表面増強赤外吸収分光(SEIRA),局所プラズモン共鳴(LPR)による単分子検出および電流・光応答ガスセンサーへの応用が期待されている。これらの実用化を目指して,これまで,おもに真空蒸着や金属コロイドのチオール修飾によって,基板上にナノ粒子を分散させている。しかし,いずれの方法においても,孤立した均一サイズの金属ナノ粒子を高密度に配列させることは困難であり,新規手法の開発が望まれている。本研究では,高密度に集積した均一サイズ金属ナノ構造体の作製が強く望まれている,単分子検出および電流・光応答ガスセンサーを念頭に置いて,Si, SiO_2, PET,ポリイミド基板上へのパターン形成と蒸着を利用したAu, Pd, AgおよびCuナノ構造体の創製を試みる。研究開始の初年度には,4種類の基板Si, SiO_2, PET, ポリイミドに対して,斜入射・低速イオンビーム照射を行い,基板表面に形成されるパターンを観察し,再現性良くリップル(ストライプ模様)形成およびドット形成が起こる照射条件を見つけることに専念した。その結果,いずれの基板においても,0.8keV Arイオンを照射した表面に明瞭なパターンが観察された。50°および60°入射では,100nm程度の間隔をもつリップル構造が形成され,70°入射では,ドッドに近い形状を有する表面が現れた。また,AuおよびAgナノ粒子を未処理およびパターン形成したSiO_2表面に作製し,大気中におけるナノ粒子の安定性を検討した結果,いずれの試料においても時間経過とともに,プラズモン吸収ピークが長波長側へとシフトする現象を見出した。さらに,そのシフトが,炭化水素類のナノ粒子表面への吸着に起因することと,炭化水素類がイオン・プラズマ処理で脱着することを明らかにした。
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