研究概要 |
近年のナノサイエンスの発展とともに,ナノメートルサイズで三次元的空間制御が要求されている。とくに,触媒,バイオセンサーおよびガスセンサーの高感度・高精度化を図る上で,金属ナノ粒子や金属ナノロッド等のナノ構造体を均一かつ高密度に分散させる技術の確立が急務である。本研究では,低速イオンビームを用いる独自の方法で,均一サイズの金属ナノ構造体を基板上に規則的に配列させ,高密度に集積化する手法を開発・確立することを目的とした。また,23年度に見出したAuおよびAgナノ粒子に対する吸光度の経時変化の機構と,バイオ・ガスセンサーの実用化に必須となる光学的特性の安定性を保つための方法を検討した。パターン化基板(透明石英,PET,ポリイミド,黒鉛)上にスパッタ蒸着と真空蒸着を用いてAu, Pd, AgおよびCuナノ構造体を成長させた。いずれのナノ粒子/基板においても,ナノ粒子の規則的配列には至らなかったが,黒鉛基板において,パターン化の際に基板表面に残留した照射欠陥によるナノ粒子の高密度化を見出した。 大気中に放置した透明石英基板上Agナノ粒子では, C, N, Sなど不純物が吸着し,硫化物等の生成によるプラズモン吸収強度の減少と最大吸収波長の長波長シフトが観察された。光学的特性が著しく変化したAgナノ粒子に対して,低エネルギーイオンビームを照射すると,スパッタリングによる不純物の脱着や硫化物層の除去によって,その光学的特性が回復することが分かった。また,大気中に放置したAuナノ粒子では,C吸着によると思われるプラズモン吸収強度の増大と最大吸収波長の長波長シフトが観察された。Auナノ粒子に吸着したCは,低エネルギーイオンビームおよびプラズマ照射により,除去できることを示した。
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