研究概要 |
本年度は、(1)超音波還元法による酸化物内包カーボンナノチューブ(CNT)の調製、(2)酸化物内包CNTのNO_2吸着特性におけるCNTのチューブ壁厚効果、(3)酸化物とCNTの接合界面における微細構造観察、を目的とした。 (1) 超音波照射による局所加水分解により(a)酸化スズ(SnO_2)、(b)二酸化チタン(TiO_2)の内包を試みた。 (a) 四塩化スズ五水和物(SnCl_4・5H_2O)と濃塩酸(1MHCl)の混合溶液に超音波照射することで、局所的な加水分解を発生させ、水酸化スズ(Sn(OH)_x)の沈殿物をCNT内外に析出させた。乾燥後、濃塩酸中で加熱することでCNT外壁の沈殿物を除去した。但し、沈殿物の除去が不十分な場合、アルゴン雰囲気での熱処理(アルゴン焼成)も行った。 (b) 四塩化チタン溶液(9MTiCl_4)は空気中の水分で容易に加水分解し、TiO_2が生成するため、濃塩酸溶液に四塩化チタン溶液を少量滴下することでチタン成分をイオン化させた。超音波照射、四塩化チタンの濃塩酸への滴下量、アルゴン焼成などの条件により、500nmのCNTの内部に存在するTiO_2粒子の数は、おおよそ5,10,20個で制御できた。 (2) 硝酸処理条件を変化させることで、CNTの壁の厚さを制御する試みは現時点で成功していない。市販の二層カーボンナノチューブ(DWCNT)の不純物を硝酸処理で除去した後、SnO_2、TiO_2の内包を試みる。 (3) 透過型電子顕微鏡観察により、SnO_2では(110)面、TiO_2では(101)面がCNT内壁の(002)面に沿って成長していたことがわかった。このようなヘテロ界面がp-n接合の形成(空間電荷層の形成)に重要な役割を果たしている可能性が示唆される結果であった。
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