本研究は現在の8Li放射性トレーサーによる拡散係数測定手法の限界値(D=10^-9cm2/秒)を定めている1秒あたり1ミクロン程度の深さ位置感度をナノメータスケール(~10nm)の感度に改善する事で拡散係数の測定下限値を大幅に改善(D=10^-12cm~2/秒)し、ナノスケールでの固体内のリチウムの動的挙動をその場観察することで、リチウム電池の正極、負極材料のオンライン、非破壊的拡散係数測定手法を確立することを目的とする。 本年度は数値シミュレーションの開発を行い、実験手法の高度化を目指した。シミュレーションの結果、検出器は当初予定の2対のものではなく、片側のみの測定でも目的としている拡散係数を測定できることが判明した。これにより、自立型の試料を用意する必要がなく、試料は基板上に蒸着されたもので測定可能であり、より汎用性の高い測定手法が得られることが分かった。これに基づき、検出器配置の再検討を行い、必要な検出器、ビームモニター等の製作を行った。さらに、JAEAタンデム加速器施設質量分離器(ISOL)下流の低エネルギービーム輸送系で、測定で必要な10keV程度の低速8Liビームを輸送可能かどうかISOLのイオン源から供給される低速安定7Liビームによる試験を行い、輸送効率を損なうことなく輸送可能となるように同輸送系の光学要素の最適化を行った。また、平成23年3月の震災のため、延期した測定用真空槽の設置を平成23年度中に完了した。
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