本研究は現在の8Li放射性トレーサーによる拡散係数測定手法の限界値(D=10^-9cm^2/秒)を定めている1秒あたり1ミクロン程度の深さ位置感度をナノメータスケール(~10nm)の感度に改善する事で拡散係数の測定下限値を大幅に改善(D=10^-12cm^2/秒)し、ナノスケールでの固体内のリチウムの動的挙動をその場観察することで、リチウム電池の正極、負極材料のオンライン、非破壊的拡散係数測定手法を確立することを目的とする。 本年度は、平成22年3月の震災のため延期した測定用真空槽の設置を完了した。また、昨年度に開発した数値シミュレーションを用いて、当初予定の2対のものではなく片側の検出・器のみで目的とする測定下限値を得られるように、検出器の設定角度、立体角、ビームエネルギー等の実験要件の最適化を行った。1×10^6個毎秒、エネルギー8keVの8Liビーム(実績値)を、1.5秒試料に照射し、4.5秒間測定というサイクルを1時間繰り返し、10度に設定したSi半導体検出器でアルファ線の時間強度変化を測定することで、1×10^-12cm^2/秒の拡散係数測定が可能であることが判明した。また、東北大学多元物質科学研究所により測定試料LiCoO_2の薄膜試料(Pt基板上に約200nmの厚さ)を製作していただき、レーザー変位計により試料の一様性の測定を行った。製作された試料の非一様性は10%以下であり、数値シミュレーションにより測定にあまり影響を与えないことが判明した。
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