22年度は本研究計画した通り進展し、目標とした二つの成果が得られた。 ●微小ナノホーン集合体(s-CNH)を大量分離する技術の確立 カーボンナノホーン(CNH)集合体は高い物質吸着能力を有し、物質の内包と徐放が容易であるということから、キャリアーとして薬物送達システム(ドラックデリバリーシステム:DDS)への応用が期待されている。しかし、CNHが極めて安定であるため生体内に投与後分解しづらく、また集合体サイズ(約100nm)が大きいため体外排出するのが難しいという問題がある。したがって従来のCNH集合体を更に微小化が必要である。本研究では、強酸(H2SO4とHNO3)を用いてCNH集合体を処理することにより、微小集合体ナノホーンの大量分離が成功した。様々な実験を行い、CNHの壁を壊れず酸化しすぎないように、CNHの大量分離が出来る最適な条件を得た。電子顕微鏡(TEM)及びRaman分光器により、元の集合体と比べ、分離したs-CNHの構造は大きく損傷していないことを明らかにした。また、ダイナミック光散乱光度計で測定した結果により、分離したCNH集合体のサイズは20-50nmであることが分かった。 ●ステルス性を高める修飾に成功 CNH集合体を化学修飾しないまま血管内投与される場合は異物と認識され、免疫細胞などに貪食されるため、がん組織等の病変部へ蓄積が難しくなっている。本研究ではs-CNHを生体適合性高い高分子のポリエチレングリコール(PEG)で非共有結合的に修飾した。マイクロファージ貪食細胞を用いて、修飾したs-CNHのステルス性をin vitroで検証した。分離したS-CNH(20-50nm)は元のCNH(100nm)より細胞への取り込み量が少ない。PEGで修飾することにより、s-CNHはほとんどマイクロファージ細胞に取り込まないことが分かった。
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