本研究では、CNH集合体の単分離化によるサイズ制御とその単離したCNHへの化学修飾により、選択的に癌患部に到達可能な新機能性ナノカーボン材料の作製を試み、それらのin vitro、in vivo試験により、その癌治療の効果を検証する。 昨年度まで小さいサイズのナノホーン(S-NH)を通常の集合体(L-NH)からの大量分離することに成功した。作製したS-NHは粒径30-50nmのサイズであり、細胞レベルでの実験を行った結果、S-NHはマクロファ-ジ細胞への取り込み量が少なく、化学修飾により標的癌細胞への取り込み量が大きいというDDSとして優れた特性があることを明らかにした。 本年度は、研究計画の通り進展し、目標とする三つの成果が得られた。(1)独自なプロセスを用いて、S-NHがPBSなどのイオン溶液中に再凝集し易いという問題を解決し、S-NHの表面に抗がん剤CDDP、PEG及び標的分子EGFを多重修飾に成功した。(2)多重修飾したナノホーンが細胞に対してどのような影響を及ぼすのかを調べた結果、S-NHはL-NHと共に毒性が非常に低いことを明らかにした。(3)担癌マウスを用いて、修飾したナノホーンが癌組織に選択的に到達できるがどうかを確認し、がん治療効果を検証した。その結果、L-NHを用いる場合と比べ、多重修飾したS-NHを担癌マウスに静脈投与することにより、腫瘍の増大速度は減少したことが分かった。この研究により、ナノホーンDDSの実用化研究を加速する事が期待できる。
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