研究概要 |
本研究では、100キロ塩基対を越えるDNAを対象として、1分子レベルでDNAの高次構造変化を計測することを中核的な方法論としている。各種抗がん剤や環境変異原物質等の環境ストレスによって引き起こされるDNAの高次構造変化を計測し、その結果を二次構造変化とも対比させて解析を進めた。 平成24年度は、以下の成果が得られた。 1.in vivoで抗腫瘍活性を有する新規アゾラト架橋白金(II)二核錯体によって引き起こされるDNAの二次構造変化を、経時的にCDスペクトルにより測定し、二段階反応からなる相互作用機構を提唱した。 2. キラルな4価のポリアミンの立体異性体4種類(RS-RS, SR-SR, RS-SR, SR-RS)を合成し、長鎖DNAに作用させたときの凝縮能を比較した。DNAはキラルな分子であることから、凝縮剤のキラリティーがDNAの折りたたみ転移に重要な影響を与えることが期待される。蛍光顕微鏡を用いたDNA分子の高次構造変化の直接観察により、凝縮能は、RS-RSが他の異性体に比べて4倍程度高いことが明らかになった。さらにCDスペクトル測定によりDNAの二次構造変化を調べたところ、RS-RSが他の異性体と比べて顕著に高い活性を示した。また、電子顕微鏡による凝縮DNAの微細構造観察から、4価のスペルミンを用いた場合とは異なる特徴的なミニトロイド構造をとることが明らかとなった。ヒストンタンパク質に代表されるような核タンパク質は、全てキラルな分子であることを考えると、今後ゲノムDNAの構造や機能がキラル相互作用とどのように関連しているかを明らかにしていくことは興味ある研究課題と思われる。
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